大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)2850号 決定 1952年12月08日

本籍並びに住居

埼玉県北埼玉郡不動岡町大字下谷一四九二番地

農業

樋口正男

昭和四年四月一八日生

本籍並びに住居

埼玉県北埼玉郡不動岡町大字下谷一〇六一番地

農業兼露天商

江森辰五郎

昭和三年七月二七日生

右の者等に対する窃盗被告事件について昭和二五年六月二二日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人等から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人樋口正男の弁護人奥田三之助の上告趣意第一点について。

論旨は原審において主張せず従つて原審の判断を経ていない事項に関するもので上告理由として不適法である。しかも第一審第一回公判調書によると、検察官は冒頭陳述の後本件犯罪に関する被害届等と共に、所論前科調書及び素行調書の取調を請求したのに対し、被告人及び弁護人は証拠調に異議がなく、右書類を証拠とすることに同意した為め、順次証拠調が実施せられ、右前科調書及び素行調書は、前記被害届等の本件犯罪に関する証拠書類が取調べられた後にその取調がなされているのである(記録四四丁裏ないし四六丁表)。してみれば第一審の訴訟手続には何等所論の如き刑訴違反のかどはないのであつて、所論違憲の主張は、その前提を欠ぐことゝなるのである。

同第二点について

論旨は憲法違反の語を用いてはいるがその実質は要するに、第一審判決が本件窃盗の目的物として判示するところは、不明確であるというに帰する。しかし判決に示すべき窃盗の目的物の表示としては、原判決の指摘するとおり、第一審判決の判示する程度で十分と解されるので、論旨は採用の限りでない。

被告人江森辰五郎の弁護人並木新治の上告趣意について。

右は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山 精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例